2009年5月5日火曜日

国際人として

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Class of 2009M男です。

はじめに
いよいよ卒業式まで1週間をきり、アメリカ生活も残すところ10日です。ビジネススクールの2年間で新たな発見や学び、人との出会い、(個人的には10kgの減量に成功、笑)など、ブログに書ききれない想いがあります。その中でも、自分なりの視点で何か書ける事はないかと思い投稿しています。
私はビジネススクールに来る前に1年半オーストラリア・シドニーでの赴任経験がありました。昨年のサマーインターンでアメリカでも働く機会に恵まれ、海外生活について、アメリカについて、そして日本について幅広い視点で見ることができたのではないかと思っています。20代後半~31になるまでを海外で過ごした経験をもとに、思うところを最後につづりたいと思います。

ネイティブスピーカー限界年齢
留学される皆さん(特に純ドメの方)にとって、留学中の英語力の向上は非常に関心の深いところではないかと思います。私は、純ドメとしてシドニーに赴任し1年半英語で仕事をし、MBA留学で約2年間英語環境で勉強をしました。他の純ドメの同級生の状況をみても、留学2年間で仕事をおこなうレベルの会話力はつけられるように思います。ただ、スラングなど砕けた会話になじむには、相当の努力が必要だと思います。
では、ネイティブにできるだけ近づくには、アメリカで過ごし始める年齢が関係するのでしょうか。残念ながら大いに関係あるいえます。学部から留学している日本人や、同級生日本人のお子様の英語適応力を見ているとそういわざるを得ません。
右のように英語力に必要な要素をピラミッド化してみると、最終的にネイティブといわれるためには、完璧な発音と「非言語常識」を操れる必要があると思います。非言語常識と勝手に名づけましたが、要は日本でいう「空気を読める」感覚とか高いレベルの文化理解に基づいたスラング・ジョークの使いまわしなどを意図しました。この発音と非言語常識は、若いうちからアメリカで育たないと習得できないと思います。
正しい発音の習得は10歳前後まで、深い文化理解は20歳位までが限界のような気がします。(fluent levelに必要な、文法・語彙・文化理解も相当横に広がりが大きいので、ネイティブを目指さなくても継続的に吸収する必要があります)

キャラと地頭力
では、英語の習得限界がある中で、英語環境で自分の力や性格を100%出し切ることは困難なのでしょうか。これについては、No、と感じています。結論からいうと、言葉はあくまでもパソコンでいうOSにしか過ぎず、パソコン本体(ハード)のスペックが結局その人からのアウトプットを左右すると思います。あえて言うなら、「MacBoot Campを使ってWindows OSを使用する際、メモリーの容量とCPUの処理能力が十分でないと、フリーズが起こりやすくなる」、といった位のところでしょうか。
バイリンガルの人は頭の中でどの言葉を使って考えているかという問いかけを聞いたことがあります。ヒトは脳内で言語という具体的なツールを用いて思考せず、抽象化された脳内信号で思考をしており、外界にアウトプットするときに初めて言語に転換されるという答えだったと思います。つまり言語はあくまでもフィルターに過ぎず、Output performanceはその人が持つ根本的なCompetencyに依存すると言い換えることができると思います。
MBAの授業での成果にしても、ネイティブスピーカーが必ずしも高い成績を残せるわけではありません。Class of 2009の成績上位20%が発表されましたが、うち33%がインターナショナルスチューデントでした(Class of 2009のうちinternational student30%弱)。我々日本人からも成績上位者がでました!地頭力は言語に関係なく発揮されるようです。
これは何も能力面でのoutputに限らず、その人のキャラクターにも言えます。その人の本来的な性格は、言葉に左右されることなく、むしろ表面的な言葉に包み隠されていない分、より強く周りの人に評価されるように思います。

人間勝負
これらの地頭力やキャラの重要性は、シドニーで働いているときから感じていました。仕事についても、言葉ではなく、その人の能力・タイプが仕事の成果に大きく影響していました。そして自分とは何か、自分の能力とタイプはどの程度か、いやというほど知らされます。
海外では、母国で得た学歴やバックグラウンドなど、表面的な看板を理解してくれる可能性はかなり低くなります。その中で、お互いに「その人がどういう人か、何ができるか」ということを理解しあい、生産性を高めてあっていく。まさに裸一貫の人間勝負。シドニーで感じ、そして、アメリカでも一段と強く感じました。
たとえ言語を完璧にできるようにならなくても、アメリカ人になれなくても(笑)、海外で仕事・勉学することは大きな意義があると感じています。

アメリカとダイバーシティー
なりたくてもなれないアメリカ人(笑)。アメリカという国、そしてそこにいる人とはどんなものなんでしょうか。日本とはどこが違うのでしょうか。オーストラリア、アメリカと海外生活を送ったこともあり、アメリカという国について、そして日本について3国を比較しながら考える機会に恵まれました。
人種の坩堝。誰もがそう称するアメリカ。その国にあって、ダイバーシティー(多様性)という考え方が全ての行動原理に徹底されていました。ビジネスクールの学生についても、留学生の割合、マイノリティーの割合、女性の割合、キャリアバックグラウンドの多様性、など、様々な指標でダイバーシティーを守ろうとしています。大学の受験選抜では学力を基準にスクリーニングされるなど、同質性を重んじる日本のシステムとは全く逆の発想です。大学に限らず全ての社会システムにこのダイバーシティーが徹底されているように感じました。
UNCでは(おそらく他の学校でも)、GLBTという同性愛者の権利を守る活動が活発で、この点にも様々な価値観を守ろうとするアメリカ人の姿を感じました。そして、これらの多様なものを一つに纏め上げ、国の推進力としていく様は、黒人初の大統領オバマ氏が「One」というスローガンでアメリカ人の支持を受け大統領に選出されたことにも現れていました。
オーストラリアも移民からなる多様な人種の集まりでしたが、社会システムと人々の価値観におけるダイバーシティーの浸透の程度が全く異なると感じました。いろんなものを飲み込んでいくアメリカの底力は想像以上で、どの国も真似できるものではないと思いました。

日本人として
一方で、ダイバーシティーが重んじられる社会だからこそ、異質な価値観を目の当たりにし、自分がこれまで築いた価値観が脅かされると感じることもありました。ダイバーシティーの度が過ぎることについての違和感についてアメリカ人の同級生に話したときに、「そういう社会にあって、親の教育が非常に重要」と答えてくれました。「『何でもあり』の環境でも、educatedな人は道を外さず生きていく」というニュアンスと解釈しました。アメリカで生まれ育っていないので、この点について「その通りだ」とは納得し切れませんでした。違った価値観への適応力・柔軟性について自信がありましたが、同質性を重んじる日本で育ったせいか、保守的な自分の考え方に気づかされました。
99%の人口が日本人の日本では、多様性に対する意識が非常に低いと思います。これからの人口減少、労働人口の減少で、女性の社会進出を一層サポートする動きはあります。しかし、外国人などの多様性の受け入れを今後どうしていくかについて、日本人の意識がアメリカ並みになることは私が生きている間はないように思います。
海外生活を通じて日本人であることの誇りも感じました。アジア人が比較的軽く見られがちなシドニーでも日本に対する食いつきは相当なものでしたし、MBAの授業で日本のビジネスが取り上げられることは相当数に上りました。日本は、経済・文化・政治のレベルではアメリカにも引けをとらない恵まれた国だと海外にきて改めて感じます。

国際人として
アメリカ人にはなれない(当然ですが。笑)、英語はnativeレベルにすることはできない、ダイバーシティーについての考えで限界を感じる。そんな中で、私は海外生活を通じてどう成長したのかと自問自答した結果、「日本をベースとする国際人」として生きていける立場になったという結論に至りました。
変化に直面していく日本で、世界に誇れる日本で、異質なものを受け入れる「考え方を理解できる」立場で、国際共通言語としての英語を使えるレベルで、自分の持てるものを発揮していける。海外生活を通じて、そんな自分になったのではないかと感じています。
(右チャートは、私が考える理想の国際人)

おわりに
MBAというとキャリアのためにビジネスを学ぶ場で、MBAを得たことによる金銭的リターンが中心に語られることが多いと思います。私もそういった視点で、10年以上に渡りMBAを想いつづけ卒業にいたりました。しかし、ここで書いた海外生活での経験は、単純な投資リターンだけで語れない大きな財産です。MBA留学は、いろんな側面で自分を成長させてくれる素晴らしい機会でした。

長いエントリーになりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございます。

UNCで出会った皆さん、本当にありがとうございました。今後もお互い刺激し合える仲でいましょう!
受験生の皆さん、MBAはキャリアだけでなく、人間的にも大きく成長できる素晴らしい環境です。合格を信じて頑張ってください。UNCでご縁があれば最高です!
前職でお世話になった方々、そして家族のみんな、進学をサポートしてくださり、ありがとうございました!

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