2009年9月13日日曜日

Negotiations

Class of 2010のMskyです。
久しぶりの授業紹介です。
# 実は授業紹介については書き溜めたものがあるのですが、折を見てまた投稿していきたいと思います。

さて、Negotiationsの授業について。
その名のとおり、いかに交渉をうまく進めるかを学ぶクラス。学生どうしが与えられたケース(売買交渉など)のロールプレイングを行った後、クラスでそれを振り返り、どこがうまくいかなかったか・どうすれば改善できるかを学びます。

昨年まで担当で人気のあったBob Adler氏(Mod3のBusiness Ethicsも担当)がCommissioner of the Consumer Product Safety Commissionとしてオバマ政権にスカウトされ離任したため、今年は若いvisiting instructorのKevin Hill氏が担当しています。授業が始まる前はどうなるか多少心配でしたが、ユーモアを交え工夫を凝らした授業はためになるだけでなく楽しめます。履修している学生は若干international(exchangeの学生を含む)の比率が高い気はしますが、概ねビジネススクール全体のdemographyを反映しているように思われます。

講義は科学的な根拠に基づいており、様々なmyth (根拠のない思い込み) を覆してくれます(例えば、価格交渉などは(後に述べる前提付ですが)「先に数字を口にしたほうが不利」というのは誤り、等)。また、とかく交渉というと「情報を漏らさず、自分の取り分を大きくすれば勝ち」という極端な見方をしがちですが、「交渉は必ずしもゼロサムゲームとは限らない。両者でパイの奪い合いをする前に、お互いの関心(interest)などの情報交換をし、パイそのものを大きくする(”effective frontier”を探る)ことだ」という、“ともに幸せになる方法はある”、という考えが新鮮でした。

ただし、パイを大きくしつつ自分の取り分を大きくするには、“余計な情報”は漏らしてはいけません(“手の内”を見せると、大きくなったパイを分捕られてしまいます)。「価格は譲れないが月末納金には応じられる」、「発注ボリュームをもらえれば短納期に応じられる」、というやり取りはOKですが、「他社なら¥○○・△△日納期」と言ってしまうのはNGです。

交渉に臨む前に、以下の前提情報を整理しておきます(逆に、これができていなければ交渉に臨むべきではない)。
Target
目標。あらかじめ譲歩することを見越して“ふっかける”のは信頼関係を傷つけるため得策とはいえない。
BATNA (Best Alternative To a Negotiated Agreement)
ベストな代替案。交渉を有利に進めるため、契約が成立するまでは改善に努める(ex. 相見積りを取る)。
Reservation Point
譲歩の限界(これが確保できなければ交渉決裂)。BATNAを参考に決める。
Bargaining Zone or ZOPA (Zone Of Possible Agreement)
お互いのReservation Pointが許す交渉可能範囲。相手のTarget、BATNA、RPを予測しておく。
3-I: Interest, Incentive, Inquiry
その他の情報。お互いの関心の違いを生かしてwin-winの結論(”effective frontier”:全員の利益が最大化される状態)を見出す。

また、昨日はクラス内で「bluff (はったり) やlie (嘘) が交渉でどの程度許されるか?」というアンケートがありました。オバマ大統領に対して「You lie!」と議員が叫んだ件が物議を呼ぶほど“嘘”に対して非寛容な国民性ですが、意外にも「交渉を有利に進めるためならば倫理に反することも許される」と考える程度は思いのほか高い(私のスコアはクラス平均よりもダントツに低い)という結果でした。これを一般化するのは乱暴かもしれませんが、外交などで一般に言われる日本人の交渉下手の原因はこういうところにもあるのかもしれません。なお、倫理はさておき「嘘は割に合わない(いずれ自分に返ってくる等して、合理的ではない)」というのが結論でした。

現在は、数週にわたる労使交渉の最中です。労使関係に限らず、取引先や関係部署との調整など、長期的な関係が肝となる状況でどの交渉すればよいかをしっかり学びたいと思います。

Posted by Msky

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