Class of 2010のMskyです。
すっかりご無沙汰でしたが、秋学期後半(Mod2)中は Exchange Programで中国の中欧国际工商学院:CEIBS (China Europe International Business School)に行っておりました。Googleの騒動ですっかり有名になった中国当局のインターネット規制(万里の長城(Chinese Great Wall)にかけ、通称 Chinese Great "Firewall")によりブログにアクセスできず、久々の登場です。
上記Exchangeについてはまた機会を改めて書くつもりですが、今回は時事ネタを絡めて秋学期前半(Mod1)で履修したService Marketingの授業紹介をしたいと思います。
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「顧客は製品を買うのではない。製品によって提供される実益(utility)を買うのだ。」というのは“マネジメントの発明者”、故Peter Drucker氏の言葉だそうです。産業構造が製造業からサービス業へシフトする中、顧客に目に見えない“体験”(experience)を売るサービスについても学んでおこうと履修したのがこの授業です(Zeithaml教授はこの分野の第一人者であり、こんな恵まれた機会を逃す手はないという思いが働いたのも事実です)。
サービスは、目に見えない(伝えにくい)、在庫できない、価格設定が難しい(原価や顧客価値が計りにくい)などの特徴があります。また、従来のMarketing 4P(Product、Price、Place、Promotion)に、新たな3P=People(従業員&顧客)、Physical Evidence(設備、器具etc.)、Process(手順etc.)が加わります。
こうした特徴を持つサービスの向上を図るフレームワークとして、Zeithaml教授が提唱する“Gaps Model”を紹介されました。顧客の期待するサービスと実感しているサービスにはギャップがあり、1. 顧客と企業が認識しているサービスとのギャップ、2. それと顧客目線のサービス基準とのギャップ、3. 提供されるサービスとのギャップ、4. それと顧客に伝えているサービスとのギャップ、のそれぞれに対し、1. 顧客が何を求めているかを知り、2. 顧客目線でサービスをデザインし、3. サービスを実施する環境を準備し、4. 正しく顧客に伝えることでそれぞれのギャップを縮め、サービス向上につなげようというものです。
そして、サービスを的確・適切に表現してGap 2の顧客目線でのサービスデザインを行うツールとして、Service Blueprintingが紹介されました。Serviceで加わるMarketingの3P(どういうProcessで、誰が顧客とコンタクトするか(People)、どんなPhysical Evidenceがやり取りされるか)をダイアグラムで表現します。部品でいえば設計図、ソフトウェアのフローチャートに相当します。これについてはグループ課題が出されたのですが、たしかに目に見えないサービスについてグループで議論するには効果的な可視化ツールだと思いました。
テクノロジーの利用も変化の著しい分野です。例えば、ホテルの宿泊費や航空券の価格などはかつては定価販売でしたが、これら在庫できない特徴を持つサービスの供給と需要をダイナミックにコントロールするため、オンライン予約で価格を柔軟に変えることは今では当たり前です。
実はこれはSupply Chain Managementの授業(未紹介)で取り上げられたDellの“Sell-what-I-have(持っているものを売る)戦略”に通じるもので、各商品の供給量に応じて価格設定することで需要をコントロールし、BTO (Built-To-Order:受注生産)による顧客カスタマイズと短納期の両立をサポートしています。Dellがトヨタ生産方式を取り入れたことは知られていますが、供給(生産)側だけでなく需要側をもコントロールすることで需給マネジメントを図っており、その意味では一歩進んでいると言えるかもしれません。
話が逸れましたが、そのほか、製造業のサービスへのシフトについては、Rolls-Royce社の航空機エンジンビジネスに注目しました。R社はエンジンの販売に加え、飛行時間(≒エンジンの使用時間)に応じて課金するビジネス(Total Care、Corporate Care)を始め、今では売り上げの過半を占めるそうです。顧客が必要としているのはエンジン(製品)ではなく航空機を動かす推進力ですから、理に適ったビジネスといえるでしょう。また、エンジンの耐久性があがればR社のコストだけでなく環境負荷も抑えられ、一石二鳥です。
そして最後に、Service Recovery(顧客の支持を失った際にいかに回復するか)です。アメリカの格安航空会社の一つJet Blueのケースで、大吹雪の際に欠航の判断を下すのが遅く、状況を適宜知らせないまま乗客を滑走路上の飛行機に10時間近く閉じ込め、その後の対応も稚拙で 大問題になり、結局CEOが更迭されるまでに至りました。しかし、Jet Blueはこのままでは終わらせず、顧客の信頼を回復する様々な試みでloyal customerを取り戻し、翌年も大吹雪で欠航を余儀なくされましたが、前回の学びを生かし大過なく乗り切りました。
ここから連想されるのが、一連のリコール問題です。今回の騒動の裏にはナショナリズムやそれを利用した米政府(GMの株主)の意図が見え隠れしますが、問題はリコールそのものよりその事後対応だと感じます。事実と異なる認識もあるようですが、米世論の批判は、判断が遅い、情報の開示が遅い・不十分というところにあるようで、Jet Blueのケースと類似しています。これまで様々な授業で好例としてたびたび登場したトヨタですが、何年か後にはこのケースも扱われるかもしれません。その結びが「ターンアラウンドに成功した」となっていることを祈ります。
Posted by Msky
1 件のコメント:
i want do MBA from chine university of north carolina .
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