2008年9月17日水曜日

アメリカでみる金融大混乱



Class of 2009のM男です。
当事者にとってはいささか不謹慎かもしれないですが、アメリカでみる生の金融騒乱をお伝えすべく投稿します。

ご存知のとおり、リーマンブラザーズの破産をきっかけに世界の金融市場は大混乱に陥っています。先週週末からこのニュースがテレビや新聞で扱われ始め、刻々と変化する状況が生々しく伝わってきました。

始まりは、先週週末に開かれた米証券取引委員会(SEC)によるリーマンブラザーズの救済会議。会議にはバンクオブアメリカ(バンカメ)やゴールドマンサックス、シティーグループなどが参加し、リーマンブラザーズの救済について議論しているという報道でした。当初金曜日から土曜日にかけてはWallStreet Jouranlから伝わってくる報道は、買収についての楽観的な報道で、行方に注目していたものの、8月以来噂になっていたリーマンの身売り騒動がひと段落するなという程度でした。買収をする候補がバンカメとバークレイズキャピタルに絞られ、アジア市場の開始前にひと段落すると誰もが思っていました。

ところが、状況が変わったのがこちら時間で土曜日の深夜。WallStreet Journalの報道が一変して悲観的なものになりました。最後まで交渉についていたバークレイズキャピタルが、株主の合意が得られないということで買収をあきらめました。米政府による支援・保証がつかないということが最終的な引き金になったようです。これを機に報道は一気にリーマンの倒産報道に切り替わり、アジア市場の開始を前に日曜夜まで倒産の影響についての報道一色になりました。

案の定、開場したアジア市場は一斉に下げ一辺倒、ドルも3円ほど一気に売られアメリカ市場へとその影響が引き継がれていきました。リーマンの買収検討を行っていたバンカメが突然メリルリンチの買収を発表し、市場に一層大きな驚きを与えました。リーマンブラザーズに対する債権を保有する金融機関の株価が一斉に下がったのをはじめ、アメリカ最大の保険会社AIGが8兆円の増資を求めているという報道で一気に負の循環にはまっていきました。

おそらくここから先は日本でも報道されているとおりだと思いますので、ここから先はビジネススクールでの反響を書きたいと思います。


写真は、昨年リーマンブラザーズのNY企業訪問会で頂いた記念グッズです。UNCの学生にもリーマンブラザーズは人気就職先の一つで、今年の2月頃、リーマンブラザーズでのサマーインターンを勝ち取った学生は誇らしげに私に語っていました。ある意味「勝ち組」と思われていたわけです。米4位の投資銀行となるとそう思って当然でしょう。日本でも数年前まで拡大局面であった同社は不動産投資や投資銀行事業を中心に大きな収益を稼いでいました。

ところが、夏休みがあけてインターンから帰ってきたメンバー達はみなオファーをもらっているにもかかわらず、暗い顔をしていました。そして、今回の倒産に至り、月曜日の授業で隣に座ったそのメンバーの一人の友人はため息ばかりつき話しかけられる状況にありませんでした。

そして、火曜日、これとないタイミングでバンカメがリクルーティング活動のため、UNCで説明会を開きにきました。バンカメの本社はノースカロライナ・シャーロットにあり、UNCとバンカメは伝統的に親密な仲にあります。その経緯もありUNCからは毎年バンカメグループに大量の学生が就職します。今回の説明会は1年に1度、部門責任者から若手まで勢ぞろいする大規模な説明会。そこに集まったMBAの1・2年生は優に300を超える大規模なものになりました。(ちなみに1学年の学生は280人ほど)
年初にベアスターンズが買収され、今回リーマンが倒産、メリルリンチまで買収されるとなると、就職先が限られてくるので参加者数が増えるのも不思議ではありません。
しかし、大規模になったのはそれだけが理由ではないようでした。中には絶対金融志望ではない学生まで顔を出していました。今回の歴史的な出来事の生き証人としてバンカメのお偉いさんがどんなことを言うか聞いてみたかったのでしょう。

UNCをコア校として採用するバンカメの人事責任者は「こういう景気の中でも今後の関係を維持するために採用していく」と強調していました。また、現場責任者の一人は多少興奮気味に「バンカメはサブプライムの影響をWallStreetのなかで最も受けなかった銀行だ。メリルの買収はWallStreetを救うために、アメリカ経済を救うために我々が行動した。」とスピーチ。さすがにこれには嘲笑も漏れ、他の責任者が多少なだめる感じのコメントをしていましたが、一寸先が読めない現在の状況はたとえ買収側であったバンカメの社員も決して楽観視していないはずです。

今回の混乱でニューヨークの雇用が数万人単位で失われ、税収も一気に落ち込むといわれています。当然学生の就職活動にも大きく影響するでしょう。私が学部時代に長銀や山一証券、日債銀など、が次々と倒産・国有化され、大学の先輩達が職を失い、この後どうなっていくのだろうと不安に思ったことを思い出します。しかし、この歴史的な瞬間をアメリカで生で見られていることこは、何よりもいい勉強になっているのではないでしょうか。

Posted by M男

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