2012年12月13日木曜日

STAR Project を終えて思った事

Class of 2013のTTです。

以前当ブログでSTAR Projectについて書かせて頂きましたが、あれから早一年が経とうとしております。(http://uncmbajapan.blogspot.com/2012/01/star-project.html

できれば適宜状況のアップデートを、と思っていましたが、STAR Projectのあまりの忙しさにアップデートできず。。。ここでまとめてアップデートさせて頂きたいと思います。お堅いと飽きられそうなので日記調で書かせて頂きます。少々長くなりますのでご興味のある方のみお付き合い下さい。

<2012年1月>
先のブログでお話したとおり、我々のチームの任務はとある米大手企業の家庭用発電・蓄電機に関する戦略策定です。プロジェクトのスタートは1月中旬のKick offミーティングであり、ここでは現状認識のすり合わせと与えられた課題の再確認を行います。実はこの会社、既に家庭用発電機として注目を集めているSolar・Windに関する商品を持っており、このミーティングで「Solar・Wind以外の分野に興味がある」&「これは既存商品のマーケティングプロジェクトではない」とのお達し。Solar・ Windという二大再生可能エネルギー(そしてかろうじて若干の予備知識がある二つ)を最初から排除され、波乱のスタートです。まずは、「他にどのようなエネルギー技術が実用化可能なのか」、「他社が現在どのような商品提供しているのか」を特定するマーケットリサーチから手を付けていきました。

<2012年2月>
案の定、母国語以外で全く知らない分野のマーケットリサーチはさすがに骨が折れました。様々なレポートを読みこなし、時にはKenan Institute(UNC KFBSお抱えの企業や政府相手にリサーチやコンサルティングを提供している機関)から再生可能エネルギー分野の専門家を招いてインタービューを行う等、1月下旬から2月はほぼ全ての時間をリサーチに費やしました。2月下旬にあった第二回クライアントミーティングではそのリサーチ内容のシェア(これがメイン)と共に、今後どういった方向性で進んでいくかを議論。クライアントも当然本気でミーティングに参加してくるため、プレゼン中にも関わらず頻繁に我々を止め様々な質問をぶつけてきました。全体的には我々が提示した方向性に左程違和感はなかったようで、今後もこの調子で頑張って欲しいとの事。

<2012年3月>
ある程度リサーチは済んだので、後は戦略策定だ!というわけにはいかず、追加のリサーチに追われます。ここでは「現在の顧客の知識レベルはどの程度か」といった、簡単には調べられないがProject上非常に重要なリサーチを行います。この顧客の知識レベルについてはSurvey会社を利用しアンケートを行い(このコストはクライアントがUNC KFBSに支払うコンサルティング料金には含まれておらず、クライアントに追加で負担してもらう必要があります。負担してくれるかどうかは交渉次第です!)、現在顧客が家庭用蓄電・発電機をどのように見ているのかを調べました。また、先のプレゼンの中で商品確保の一つの手段としてVenture Capital投資を提案したので、ベイエリアで再生可能エネルギー分野に従事しているUNCアラムナイのVenture Capitalistに電話インタビューを行い、意見を伺いました。更には、チームメイトの父親が建設会社を経営していたので、企業顧客としての意見を聞くべく、その父親にも意見を伺いました。利用できるリソースは何でも利用しました。3月下旬のクライアントとのテレフォンカンファレンスでは、こういった追加情報を元に最終提案内容のラフな草案をクライアントにシェアし、率直な意見をもらいました。

<2012年4月>
4月末にクライアントとの最終ミーティングがあるため、いよいよ追い込みです。3月下旬に行ったテレフォンカンファレンスでの意見を元に、提案内容に追加・変更・削除をし、我々の提案をより具体化し実現可能なところまで持っていきます。最終プレゼンではプレゼン資料と共に、Financial Projectionや SurveyのSummary等の提出が求められるため、そちらの資料作成にも時間がとられます。また、最終プレゼン一週間程前にはUNC KFBS教授陣による事前チェックが入り、フィードバックに基づきさらに提案内容を改善、と4月はやる事が盛りだくさん。最終的には、本番前日の徹夜作業を経て、なんとか完成。ほとんど寝ずにプレゼンの練習を行い、本番に臨みました。本番後、終わった後のハイテンションそのままにゴルフに直行しました。



以上が私のSTAR Projectの流れです。プロジェクトによって若干流れは違いますのであくまで一例として考えてください。

STARを終えて改めて振り返ってみると、前職が証券リテール営業と人事の私にとっては、何もかもが初めてで非常に貴重な経験だったと思います。アメリカ人クライアントとの真剣な議論、雲を掴むようなリサーチの連続、専門家へのインタビュー等々、実際のビジネスとリンクしたまさにAction Based Learningと呼ぶに相応しい経験を積むことができました。

さて、ここまではおそらく他校のAction Based Learningと左程変わりないのではと思います。ではUNC KFBSのSTAR Programは他校のAction Based Learningと比較してどこが違うのでしょうか?一点決定的に違うところがあります。

「組織面でのチャレンジ」です。

STAR ProgramのDomestic Business Project (DBP) のケースを考えてみましょう。他校ではMBA生同士がタッグを組みプロジェクトを行うケースがほとんどです。では、実際の現場にはMBAに来るような優秀な人材だけが働いているのでしょうか?絶対にNoです。確かにMBA生同士でプロジェクトを行えばストレスレスに過ごす事ができるかもしれません。でも実際の現場はそうではないと思います。優秀な人もいれば、何も知らない新入社員もいます。UNC KFBSが意図してやっているかどうかは分かりませんが、STAR Projectではアングラ(学部生)がチーム内に組み込まれることによって、業務経験のない彼らを如何に教え戦力になるまで育て上げるか、という組織面でも実戦さながらの環境が提供されているように思います(中には教える必要もないくらい優秀なアングラもいるようですが。。。)。

一方、Global Business Project (GBP)では、他校のMBA生(Columbia, Duke等)と共同してプロジェクトを進めていきます。そのため、Face to Faceで会う機会は数回しかなく、常にSkype等を介してプロジェクトを進めていきます。当然Face to Faceで会ってミーティングする方が断然効率的だと思いますが、こういったオンラインベースでプロジェクトを進めていく機会は実際のビジネスの現場で間違いなく増えてくると思います。今でさえNYにいる社員と東京にいる社員がチームとなって動く事なんていくらでもあるはずです。このGBPはオンラインベースでのチームマネジメントを実践できるMBAでも稀な環境なのではないかと思います。

プロジェクト自体がチャレンジングなのは当然として、組織面でもこういったチャレンジが設けてられているのは、UNC KFBSのLeadership教育に対する熱意の表れなのかもしれません。

2012年12月12日水曜日

夏休みの過ごし方

Class of 2013(現在2年生)のMakotoです。日本もすっかり寒くなったと聞いており、出願シーズンのピークを迎えるApplicantの皆様には、どうぞお身体を留意され乗り切っていただきたいと願う今日この頃です。

さて今日は、僕の夏休みの体験についてご紹介したいと思います。

UNCでは5月中旬から8月中旬まで約3ヶ月の夏休みがあり、私費の人はインターンをしたり、社費の人は派遣元企業の現地法人で働いたり家族でゆっくりと観光をしたり、または欧州等のスクールへ短期交換留学へ行ったりと、思い思いに過ごします。僕も本当はインターンを経験したかったのですが諸事情により適わず、この長いヒマな夏休みをどのように過ごそうか、当初途方に暮れていました(←ありえないぐらい贅沢な悩みですよね。) 

そして思い立ったのが、南米とインドをそれぞれ1ヶ月ずつ旅行するということでした。南米は日本から遠くこれまで未踏の地で興味がありました。インドは発展目覚しくMBAの授業でもケースの中に多く登場し、またクラスに多くのインド人学生がいることからも、じっくりと自分の足で歩かなければと思いました。元々大学生のころからBack Packの旅行が好きで、卒業旅行で最終目的地のパナマ運河では、「こんな風に旅行できるのも、次は定年した時かな」とやりきれない気持ちになったのを思い出しました。今、そんなチャンスが目の前にあるのです。直ぐに航空券を手配しました。

こう書くと遊んでばかりの印象なので(実際遊んでばかりでしたが・・)MBA学生の立場で多少弁解しておくと、この旅行はMBAな視点で大事なミッションがありました。世界各国に散らばる卒業生にお会いし、MBAの過ごし方、学んだこと、その後のキャリア形成等の話を聞かせてもらうことです。MBAは彼等の人生に何を投げかけたのか、MBAで学んだ知識やスキルはその後どのように活かされているのか。UNCは卒業生ネットワークがOnlineで充実しており、早速現地の卒業生達にメールを送ってみました。長期的な視点が得たかったので、卒業後7年-15年程度経った方々へコンタクトしたのですが、多くの方が快く面談に応じてくれました。

6月上旬、フロリダ経由でPeruのCuzcoに飛びました。フロリダの搭乗ターミナルはスペイン語で溢れており、これから巡り合う世界を前に好奇心がみなぎったのを思い出します。クスコは標高3400mの高度にあり、寝ているだけで息切れしてしまうのですが、インカ帝国の名残がそのまま残る街並みを歩くと、異次元の世界にタイムスリップしたような錯覚になります。

その後は海沿いにあるPeruの首都Limaへと下山し更に陸路で北上、Ecuadorを経て、最後の街であるColombiaの海岸都市Cartagenaに着くまで約一ヶ月、色んな風土を体験しました。そしてLimaやQuito、BogotaやMedellin等の都市では、様々な卒業生の方にお会いしました。皆さん快く一緒に食事をしたり市内を案内して下さったりし、楽しい時間を過ごすことができました。何よりも、貴重な体験をシェアしてくれたことが一番の収穫でした。米系企業の現地法人で勤務しながらBusiness Planを練り起業を果たした方、外国人の奥さんの父親に頼まれいきなりFamily Businessの社長になってしまった方、米系戦略コンサルに就職しヨーロッパで経験を積んだ後に祖国の現地企業に戻った方など、生き方は様々です。しかしみんなが口をそろえて言うこと、それは「MBA2年間の体験は自分の進路や人生を大きく変えた。」「経営戦略に行き詰ったときは、MBAの授業を思い出す。だから授業を大事にしてたくさん勉強しなさい。」「リスクがある時は飛び込みなさい。仮に失敗して後悔しても、そんな後悔はチャレンジしなかったことを後で悔やむのに比べたら大したことないから。」「目先の就職活動とか、確かに大事なのはわかるけど、後から振り返ってそれはそんなに大事じゃない。景気が悪かったりどうしようもない時だってある。だけどそれに落ち込まないで、実力をつけて機会を待てばきっと道は開ける。」

お腹を壊したり、その後に訪れたインドでは騙されて高い品物や切符を買って悔しい思いをしたりしましたが、自分の足でその国を歩き、多くの卒業生と知り合いになれたことは自分にとって良い夏休みの過ごし方だったと思います。

MBAでは日々多くのクラスメートと切磋琢磨する機会があります。だけどこうして卒業生から、同級生からは得られない大局的な視点で多くのAdviceをもらえるのも、貴重な機会だと思います。(サラリーマン一辺倒な日本社会で育った自分からは想像もできないような、個性的な生き方をしている人も多くて。)

なので、Applicantの皆さんが留学した際には、ぜひこのような機会も選択肢に入れていただけると幸いです。

2012年12月5日水曜日

Finance理論とその実践

Class of 2013のSoです。MBAではFinanceを中心に勉強してきたが、ついにこれまで学んだFinance理論・技術を実践に移す日が来た。そう、自分の資産運用(確定拠出年金の運用)に理論とテクニックを応用するのである。MBAはトップマネジメントになるためのスキルだけを学ぶ場ではない。人生の全体像を設計する場でもあり、資産運用はその中で重要な要素の一つである(仮にトップマネジメントとして成功すれば、資産運用の重要性はより大きくなるわけだし・・・)。また、MBAでFinanceを学んだのに、自分の資産運用はおざなりというのも寂しい。

※以下で述べる投資方針は読者に特定の商品や投資戦略を推奨するものではなく、あくまで筆者の個人的見解である
※また、理論とテクニックに加え、個人の嗜好とエゴが多分に含まれている

確定拠出年金の運用方針を見直したのは数年ぶりである。

まず株式の比率を50%に下げ、その内訳を外国株式35%、新興国株式15%とした。株式のアロケーションを下げた理由は、金融市場の混乱が続く環境下では(今後も長期にわたり金融危機が頻発すると想定)、株高は期待できず、質の高い債券の安定性が勝ると考えるためである。理論的には、中高年に比べリスクが取りやすい若年層は、株式のリスクを取りやすい(若年層は長期で資産を運用できるため、短期の変動にそれほど過敏にならなくてもよい)。しかし、最近の研究では金融危機を含めて考えれば、債券のリターンは株式のリターンを上回ると言われており、その研究をAppreciateすることにした。思い切って、日本株はほぼゼロとした。理論に従い、ホームカントリーバイアス(自国に投資が偏重する傾向)を取り除くことにした。外国株と重複する形で新興国株式を増やしたのは、新興国企業の成長余地が相対的に大きいためである。

次に、全資産の43%を債券に配分した。日本債券は3%とし、外国債20%、新興国債20%とした。債券に偏重することでインフレが継続した際に資産価値が低下することは恐ろしい。しかし、僕はまだ長期に渡り給与収入があり、その給与収入は物価に連動するため、インフレは給与収入で対応すればいい。新興国債20%は危険だろうか。そうは思えない。財政危機にあるのはむしろ先進国で、リスクに対し利回りが高い新興国の債券は相対的に魅力が高い。いざというときは、IMFなどが「最後の貸し手」として現れると期待しよう。

残った7%はグローバルに投資する不動産投資信託に配分した。不動産投資市場に関与してきた人間として、ちょっとした哀愁を込めた7%で、ここだけちょっと根拠が弱い・・・ただし、先進的な年金や保険はオルタナティブ投資のアロケーションを増やしており、不動産に7%配分することはそれほど不思議なことではない。プライベートエクイティやヘッジファンドという選択肢はなかったために、オルタナティブは不動産のみになった。少し残念。

いずれの投資においてもアクティブ運用ではなく、パッシブ運用を選択した。アクティブとはファンドマネジャーがリサーチを行い良い銘柄を選びぬいて投資するスタイルで、パッシブとは日経平均やS&P500など代表的インデックスに連動する投資スタイルである。前者は人よりも高いリターンを目指すもので、後者は市場平均のリターンを目指すものである。意外にも思えるが、Finance分野の長いリサーチにおいては、アクティブ運用はパッシブ運用に劣るという結論が下されている。アクティブ運用は、良い銘柄を選ぶためのリサーチにコストがかかり、パッシブ運用に勝てないのである。「良い銘柄を探す作業は無駄」という結論はやや悲しいが、これは揺るがない事実である。

さて、この資産運用方針、吉と出るか凶と出るか。

2012年12月2日日曜日

将来のキャリアに悩むということ

Class of 2013のYasです。

本投稿は、アプリカントの方のエッセイ執筆やインタビュー準備に直接役立つ内容ではないかも知れません。しかしながら、留学後、さらには卒業後までを見据えた中長期的なキャリアについて考えて頂く為の一助となればと思い、公開するものです。お時間がありましたら、どうぞ最後までお付き合い下さい。

さて、「将来のキャリアに悩むということ」と題した今回の内容は、本質的には「MBAの価値はどこにあるのか?」という、これまでボロ布の如く散々議論されてきたテーマを扱っています。この問いに対する答えは三者三様で、万人向けの結論が出せるものではありませんが、私の持っている考え方の1つは「キャリアについて真剣に悩み、将来のキャリアの方向性を見出すこと」にあるのではないかというものです。以下では、そのことについて具体例を交えながらお話したいと思います。

時を遡ること今年(2012年)の5月、サマーインターンで日本に一時帰国していた際に、新たにMBAに留学される方々をお招きして、MBA留学生の就職活動に関するセミナーを実施させて頂きました。参加者の皆様のご支援のもと、欧米のビジネススクールに私費留学される総勢20余名の方々にご出席頂き、大変好評を得ることができました。そのご縁などもあって、ここ2ヶ月の間に20名弱の現役MBA生の方々から、就職活動や将来のキャリアに関するご相談を受けてきました。その中から、2つの事例を紹介させて頂きます。



Aさんのケース

Aさんは日本において戦略コンサルタントとしてのキャリアを積んで来られた後、欧州のビジネススクールに私費留学されています。就職活動は順調に進み、米系戦略コンサルティングファーム数社(東京オフィス)、日系事業会社の事業投資ポジション、アジアに拠点を置くプライベートエクイティファンドなどのオファーを獲得されました。そんな折、Aさんからご連絡があり、キャリアの最終的な選択に当たって参考意見を聞きたいとのことで、Skypeにて2時間ほどお話をさせて頂きました。

私の理解では、Aさんのキャリアにおける主な関心は、「グローバルなビジネスで通用する力を身に付けること」「事業経営に必要な能力・素養を磨き、成長すること」「前者2つを実現する上で刺激になる優秀な仲間と仕事ができること」にありました。

それらを踏まえた上でのAさんが抱かれていた悩みは、「米系戦略コンサルティングファームに行けば優秀な人達との人脈は広がり、職務経歴としてもグローバルに通用するものを構築できる一方で、仕事の内容は前職とほぼ変わらないという点では、あまりキャリアアップにはならないのではないか?」「日系事業会社の事業投資ポジションは、仕事内容としては魅力的だが、せっかく海外でMBAを取ったのに日本の大企業に入ってしまえば、昇進や給与の上昇は大変遅いことが推測され、果たしてキャリアアップにつながるのか?」というものでした。

色々とお話を伺った上で、私からは、「どの企業に就職したとしても、一生そこで働くということは無いのでは」「その前提であれば、自分のやりたい仕事に最も近いポジションはどれかを精査し、そこで数年間働いて自分を最大限成長させるというオプションを選択するのが良いのではないか」とお話しました。また、その基準に鑑みて、日系事業会社の事業投資ポジションがそのオプションに近いという印象を持ったことをお伝えしました。

数週間後、Aさんは最終的に米系コンサルティングファームの中の1社に就職することを決められました。私と話をした中で有力なオプションであるように感じられた日系事業会社を選択できなかった理由としては、「私達の会社には事業経営ができる人材はいない」と、その会社の人事部の方が明確におっしゃったことにあったと聞いています。

人の意思決定プロセスは言葉で説明し切れるほどクリアなものではありませんが、Aさんが今回、将来のキャリアについて悩んだ上で下された判断は、「海外も視野に入れた事業投資の仕事は大変魅力的ではあるが、自身の事業経営の能力・素養を磨く機会や、そうした成長を促進してくれる優秀な同僚には替えられない」というものではなかったかと理解しています。

ひょっとしたら数年後、Aさんはまた同じようにキャリアの選択を迫られる場面に遭遇するかも知れません。しかし、今回のMBA留学を経て「今後30年を左右し得るキャリアの選択」を経験したことにより、Aさん自身が何を軸にキャリアを選択・構築しているのかをある程度明確にできたことは、大きな価値があったのではないかと私は捉えています。

Bさんのケース

Bさんは外資系プロフェッショナルファームの東京オフィスにてマネジャーとして数年間活躍された後、アメリカのビジネススクールに私費留学されています。就職については、日系事業会社からMBA卒業生向けの特別なポジションを用意してもらうというオプションを引き出されている一方で、起業することにも留学前から強い関心を持たれていました。

Bさんのキャリアにおける関心は、「今後成長の著しい分野でインパクトの大きな仕事をすること」「自身の強みや前職での経験を活かせるポジションに身をおくこと」「30代でマネジメントポジションに就けること」「業績に見合った大きな報酬を得られること」でした。

Bさんは、上記事業会社に就職した場合と自身で起業した場合のリスク・リターンの比較の狭間で悩んでおられました。私は、Bさんのご専門についてあまり詳しい訳ではないのですが、Bさんが自身の経験を活かしながらも、大手のプロフェッショナルファームと直接競合することを避けながらビジネスを継続していくためには、非常にニッチな分野を狙って起業する必要があると伺っています。この場合、あまりインパクトの大きな仕事をする事はできない懸念があります。また、Bさんによれば、その分野における起業のリスクは比較的小さいものの、期待できる報酬のレベルも目標としておられる報酬水準には一歩及ばないという問題もあります。

他方、Bさんがオファーを獲得された日系事業会社は、いわゆる攻めの経営で知られていることから、実力さえあればマネジメントポジションへの積極登用も期待でき、相応の報酬を得られるのではないかと見込んでおられます。しかしながらBさんは、組織風土とのミスマッチや、経営者の交代に伴う経営方針の変更、積極経営の反動としての業績悪化など、何らかの理由によりマネジメントポジションへの昇進が絶たれた際のリスクを大きく見ておられ、まだ即断はできないという状況でした。

結論から言うと、Bさんはまだ決断には至っておられません。私がBさんとお話した際に申し上げたことは、「仕事のインパクトとそれに伴う報酬がご自身にとってのプライマリファクターなのであれば、例え周りが何と言おうとも、日系企業からのオファーを受諾してマネジメントポジションを目指すのが筋なのではないか」「と同時に、もしも起業することに大きな価値を見出されているのであれば、たとえ報酬水準の現在期待値が目標に達していなかったとしても、今起業に踏み出すことが(いかなる結果を招こうとも)最適解ではないか」ということでした。もし皆さんであれば、どのようにお考えになるでしょうか。



少し回り道をしたかも知れませんが、Aさん・Bさんの事例を通して私がお伝えしたかったことは、MBA留学という機会を得ておられなければ、こうして将来のキャリアについて思う存分悩むことができる為のリソース(時間、選択肢)を得ることは大変難しかったのではないか、ということです。換言すれば、冒頭にも書いた通り、MBA留学の大きな価値の1つは、将来のキャリアについてじっくりと考え悩み、卒業後30年のキャリアの方向性を見定めることにあると思っています。今後MBA留学を目指される皆さんが、留学を通して将来キャリアの方向性を明確にされ、その実現に向けてご活躍されることを願っています。

2012年12月1日土曜日

感銘を受けたGlobal Operation Strategyの授業

Class of 2013のTakuです。

先日トヨタに代表される日本の製造業の生産方式(以下Lean)のサービス業への応用について授業で学習しました。実体験と照らし合わせて大きな気づきがありましたので、そのことについてお話ししようと思います。

1.Global Operation Strategyのクラスについて

Staats教授 のGlobal Operation Strategyはケースベースで企業のオペレーション戦略を学ぶ人気のクラスです。Leanのサービス業への応用はStaats教授の専門分野であり、教授が書いた論文とケースを元に「かんばん」「自働化」等Leanの主要項目をインドのIT企業がどのように取り込み、生産性を向上させたか、ディスカッションベースでクラスは進行されていきました。発音しにくくそうに「カンバン」と言いながら意見を述べるクラスメイト達におかしさを覚えながらも議論に参加。クラスの後半では、ゲストスピーカーとしてUNCホスピタルのオペレーション責任者が登場し、ディスカッションで挙げられた内容をUNCホスピタルではどのように実現しているか、現場の話を聴くことができました。

尊敬する教授の専門分野に触れることが出来たこと、活発なディスカッション、臨場感ある現場の事例に加えて私が感動したのはUNCホスピタルで実際に自分がLeanを経験したからでした。

2. UNCホスピタルでの経験について

この夏、長男が誕生したのですが、生後1週間で大病を患い緊急病棟に連れて行くことになりました。慌てふためく私と妻を優しくなだめながら小児科の先生は聴診器を当てるとすぐに異常に気付いたのか、テキパキと看護婦さん達に指示出していきます。その後驚くほどのスピードで、お医者さんや看護婦さん達が集まり、息子に様々な計器が付けられ、血液検査、尿検査、レントゲンと次々に処置が施されました。難しい病気であったにもかかわらず、病院に到着後1時間もしないうちに原因が判明、その後専門の先生がすぐに到着し、緊急処置が施され、そのままICUへ。子供の体力の回復を待って手術が行われ、10日後に無事に退院することができました。

全く無駄のない作業に加えて私が感銘を覚えたのは、病室や廊下で待機している私たち夫婦に、お医者さんが忙しい中わざわざ時間をさいて「現在考えらえる原因は××です。そのために○○の検査を行います。もし××であれば、ほぼ病気は治ります。何かご不明な点はありますか?あればいつでも連絡下さい」、「××の症状は見られませんでした、現在レントゲンを撮ってさらに原因を解明しています。もう少しお待ちください。質問があればいつでもいいので聞いて下さいね」、「我々が最大限の努力をしていますのできっと息子さんは大丈夫です。何か今、私にできることがありますか?お水をもって来させましょう」「原因は実は○○でした。今到着したのは専門の先生です。これから××の応急処置を行います。何かご不明な点があればいつでも言って下さいね。大丈夫ですよ。」等、逐一、説明や励ましの言葉をくれたことでした。

3.ホスピタビリティーとLeanの両立について

徹底的に無駄を排除するLeanと私がUNCホスピタルで体験した患者や家族の心のケアを行うホスピタビリティーは一見、相反するようにも見えます。そこで先にお話ししたゲストスピーカーに質問をしました。「UNCは患者想いの病院として1位[1]に選ばれるほど患者の心のケアに時間と労力を割いていますが、無駄を徹底的に排除して効率を上げるLeanと両立するのは難しいような気がします。どのような基準で行っているのですか?」ゲストスピーカーの答えは単純で当たり前の内容に思われるかもしれませんが、実践に基づいた重みがありました。

「まずは患者の立場に立つこと、患者の立場に立てば、何が大切で何が大切でないのかを見極めることができる。私たちはその結果大切でない箇所をみんなで徹底的に議論して効率を上げることに成功しました。あなたの質問で言うと患者の心のケアは患者が最も必要としていることであり、しっかりと我々が守っていくものだと考えています。」

ここ米国では業界の垣根なしに日本が誇る製造技術がサービス向上や生産性向上に応用されている。驚きとともに感銘を受けた瞬間でした。

[1] http://news.unchealthcare.org/empnews/2011/nov2/unc-ranks-1-among-uhc-hospitals-in-patient-centeredness-a-message-from-gary-park/