2009年3月27日金曜日

GIE Brazil ~Petrobras in Rio de Janeiro編~

Class of 2010のMskyです。

私もBrazil GIEに参加してきました。今年は日本人のGIE希望者が例年より多かったこともあり、各行き先の参加枠調整の結果、Brazil枠に日本人が4人と盛況でした。Praia do ForteBovespa (Sao Paulo)はEvans2010さんが、FavelaについてはZi-coさんがレポートしていますので、私はRio de Janeiroで訪問したPetrobras について書こうと思います。
Petrobrasは「リオのカーニバル」で知られるブラジル第2の都市に本社を置く、世界第8位の総合エネルギー会社です。日本の会社にたとえると石油元売の新日本石油が近いかもしれませんが、自ら原油採掘を手がけるなど事業規模が大きく異なります(世界27カ国で事業展開。2008年の売上高は、新日石: 7.5B円に対しPetrobras: $130B)。1999年以降は民営化されましたが(株式の過半は政府保有)、現在も国内の油田の8割以上、販売の1/3以上を占め、名実ともに国を代表する企業の一つです。しかし彼らが“総合エネルギー会社”を名乗るのはそれだけが理由ではありません。石油、天然ガス、石油製品に加え、地球温暖化の防止に効果があるといわれる近年話題のバイオ燃料も手がけています。

ブラジルといえばサトウキビから生産するバイオエタノールが有名ですが、これには歴史的背景が絡んでおり、古くは16世紀のポルトガル植民地時代に遡ります。ポルトガル人はBrazil北東部(Salvador周辺)でサトウキビの生産を始めましたが、その労働力として当初はインディオを奴隷化しました。しかし(メキシコのそれと異なり)都市生活をしないインディオを奴隷化するのは“効率が悪い”ため、アフリカから黒人奴隷を大量に“輸入”。彼らを酷使して得た砂糖を輸出することでおおいに栄えたといいます。

ちなみに、18世紀のゴールドラッシュでブラジルの中心は南西部(Rio de Janeiro周辺)に移動。北東部には古きポルトガル植民地時代の影が(良くも悪くも)残ることになりました。Afro Brazilian(黒人)が多いのも北東部で、アメリカ南部との類似を感じさせます。
(このあたりまでは、出発前のPre-departure classでHistoryの教授から講義を受けました)。

さて、時代はぐっと下り1975年。第一次オイルショックを受けて*、政府主導の元で「Pro Alcool」プログラムが始まります。これは、国内で栽培するサトウキビから精製するエタノールを利用して自動車用燃料の脱石油化を図ろうというもの。ガソリンに最低25%のエタノールを混ぜることが義務付けられ(E-25)、さらに1979年の第二次オイルショックでは、エタノール燃料100%で走行可能な「E-100」自動車が販売されるにいたります。しかし皮肉なことに、E-100自動車が爆発的に売れたためにサトウキビの供給が追いつかなくなり、今度はエタノールの価格が高騰。現在はどちらの燃料でも走行可能なFlex Fuel Vehicle (FFV)が主流となっています。

* Brazilは原油輸出国ですが、国外の原油価格が高騰すると国内の価格も上がる、
  というのはCoreのMicroeconomicsで習ったとおり


というわけで、原油価格の高騰という経済的な理由で始まったバイオエタノールですが、先に述べたとおり、現在は環境保護の面で注目されています。まず、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量がガソリンに比べて少ないため。サトウキビの栽培から燃料としての利用(燃焼)までのLife Cycle Assessmentによると、ガソリン1,000Lの3.4tに対し、バイオエタノール1,000Lは0.3t(ガソリンとエタノールの熱量の違い(100:34)を考慮しても0.9t)。「カーボンニュートラル」とまではいきませんが、バイオエタノールの圧勝です。これにはサトウキビの成長過程で二酸化炭素を吸収する効果(-7.5t)が大きく寄与しています。次に、エネルギ収支(=生産で得られたエネルギ/生産に要するエネルギ)が良いため。サトウキビ由来のエタノールは8.9で、ガソリンの6.7*を上回り、同じエネルギの投入でより多くのエネルギが得られます。
* 採掘状況によって大きく異なり、二桁~2を下回ることまである
そして、エネルギ消費(消費されて“失われる”エネルギの量)が少ないため。バイオエタノール1を生産するのに必要な化石燃料は0.17、ガソリン1は0.15。バイオエタノールはRenewable(再生可能)=失われませんから、エネルギ消費はバイオエタノール0.17に対し、ガソリン1.15となり、ガソリンの1/6以下ですみます。

ちなみに、「バイオエタノール」と一口に言っても、原料の違いで製造工程や特性が異なり、上記の環境性も変わってきます。Petrobrasの資料で目の敵にされているのが、米国で生産されるとうもろこし由来のエタノール。二酸化炭素の排出量がサトウキビ由来のそれの4倍以上でガソリンよりも悪く、エネルギ収支も1~1.8とさえません。アメリカではIEA(国家エネルギ機関)主導でとうもろこし由来のバイオエタノールの生産・利用に力を入れていましたが、これで値段まで高かったら作る意味がありませんし、実際、原油価格が一息ついた現在、価格競争力もないという状況です。

(話は戻り) かつて国営だったPetrobrasがPro Alcoolに積極的に取り組んだのは自明の理で、中小の精製所からもれなくエタノールを買い上げ、バイオエタノールの増産・安定供給に努めました。本社訪問時に私が期待していたのはこれらに関する情報(Petrobrasの具体的な取り組み、これまでの反省点、耕地拡大による熱帯雨林の破壊や製造工程の環境汚染、食料との競合についての考え、これからの展望、等々)だったのですが、当日受けたプレゼンはSustainable EnterpriseのTriple Bottom Line(Financial、Environmental、Social)についての全体的な取り組みで、上記のような話を深掘りする時間がなかったのが心残りでした。

もちろん、プレゼン自体は興味深いもので、さすがに国を代表する企業だけのことはありました。例えばSocial Investmentについては、2007~2012の5年間で$700Mの予算を割き、社内外から応募される4,000件/年のプロジェクトのうち選りすぐりの100件に投資する一方、不選定のプロジェクトに対してはその理由をフィードバック。規模の大きさもさることながら、単なるバラマキやポーズとしての取り組みではなく、より良い社会にしていくんだという意気込みを感じました。

エネルギなど豊富な資源がある一方でFavelaなど様々な問題を抱えていますが、NGOや私企業の地道な取り組みでそれを克服し、「南米の雄」から「世界のブラジル」になるのも夢ではないと感じた“旅”でした。


p.s.
Rio de Janeiroの本社には「Petrobras University」という社内大学があり、新入社員は給料をもらいながら3~12ヶ月間、フルタイムで勉強ができるのだそうです。こんなところで“学生生活”ができるなんて、とちょっと羨ましくなってしまいました(笑)



p.s.2
「Praia do Forte編」では遊びまくっているように見えますが、土日のことなので悪しからず・・・
Evans2010さんも書いているとおり、平日は朝8:00からスケジュールがぎっしりで、あっという間の12日間でした。

Posted by Msky

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